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同姓同名の別人、登記簿上はどう区別する?


こんにちは! 吉田です。
吉田です。
吉田です。

突然ですが、皆さんは私の苗字をご覧になってどのような印象を抱かれるでしょうか?

よくある苗字? そのとおりです。

自慢ではありませんが、吉田姓は日本において人口が11番目に多い苗字なのです!
佐藤さんや鈴木さんほどでは無いと思いますが、自己紹介をした際に「あ! あなたも吉田さんですか! 同じ苗字ですね!」というような経験は子供の頃から幾度となくありました。

そこで、今日は同姓同名の人物に関する登記簿上での取り扱いについてお話します。

1.はじめに


例えば私が何か不動産を一部分だけ手に入れて誰かと共有状態になった場合、共有者の名前も偶然「吉田さん」である可能性もそこそこあるでしょう。

さて、そんな時に私ともう一人の吉田さんをどう区別すればよいでしょうか?
もちろん、苗字が同じでも名前は一人ひとり異なりますから、そのような場合でも名前の方で判断できますね。

しかし、実は私は下の名前の方も結構よくある名前でして……しかも男女どちらでも使われる(今風に言うとユニセックスと言うらしいです)名前のため、完全に同姓同名の人もそれなりに見かけるのです。(実際にこれまでの人生で3人ぐらい同姓同名の人にバッタリ会ったことがあります。)

はてさて同姓同名の人物二人が同じ登記簿に登場した場合、どのように区別をつける事になっているのでしょうか?

2.住所


不動産の所有者や抵当権者など、不動産に関する権利を取得した人は不動産登記簿に「氏名」と「住所」が載る事となります。(登記名義人)
簡単な手続きと僅かな費用(法務局に直接行って申請した場合1通600円)で誰でも取得する事ができる登記簿謄本に住所氏名まで載ってしまうのはプライバシー的にちょっと抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、不動産の権利関係を「公示」して取引の安全を守るためには仕方がない事なのです。

登記名義人の「氏名」だけでなく「住所」を登記簿に載せる事により、同姓同名の別人との区別が付けられるという仕組みとなっています。
なぜならば、「別人だけど名前が偶然同じ」というケースはあり得ても「別人だけど名前と住所が偶然同じ」なんて事は極稀です。
つまり、住所と氏名の組み合わせで日本人およそ1億2000万人の中の唯一人を特定できる。という理屈です。

余談ですが、「同姓同名の別人」とは逆パターンで「同一人物だけど登記簿上の住所が異なる」という場合はなんと別人として登記されてしまいます。
①北海道に住んでいるAさんがマンションの持分1/2を購入、残りの1/2はBさんが購入

②Aさんが東京都に引っ越し

③Aさんが残りの1/2の持分をBさんから買い取る

本来であれば③を登記申請する前にAさんが①で取得した持ち分に関して「登記名義人表示変更登記」(通称名変登記)の申請を行い「Aさんは北海道から東京に引っ越した」という事実を登記してもらいますが、それを忘れて③の登記申請を行ってしまった場合は
「マンションの半分を北海道在住のAさんが所持し、もう半分を東京都在住のAさんが所持している」
という風に登記され、この「北海道在住のAさん」と「東京都在住のAさん」は別人として取り扱われてしまいます。

3.生年月日


さて、本当に「氏名」「住所」が一致すれば本人だと言えるでしょうか?
実はいくつか例外があります。
現実的にありえるパターンとなると、以下の2つがまず考えられるでしょうか。

①祖父母と孫など
 日本においては両親やきょうだいと同じ名前を子供につける事はできません(昭和38・11・9名古屋高裁・高裁民集16・8・664)
 しかし、祖父母と孫の関係であればこれを禁止する既定はありません。(その他にいとこ同士、おじおばと甥姪の関係などでも同じ名前をつける事ができます。)
 有名な人物で言えば、麻生太郎元総理は祖父と同じ名前です。
 最近はあまり無いでしょうが、昔はこのような名付け方をする事もままあったようです。
 また、祖父母と孫の関係であれば同居しているという事も十分にあり得るでしょう。
 このパターンは現代の日本において最も現実的に「同姓同名」且つ「同住所」が成立するパターンと思われます。

②夫婦
 現在の所、日本では夫婦別姓は認められていません。結婚すれば必然的に夫婦で同じ姓を名乗る事になります。
 つまり、下の名前が同じ男女が結婚した場合、こちらも「同姓同名」且つ「同住所」が成立します。(住民票や戸籍が分かりづらくはなりますが、当然「同じ名前の人同士は結婚できない」等の制限は日本に存在しません)
 また、登記簿にはよみがなは記載されないため、例えば夫が「悠(ゆう)」さんで妻が「悠(はるか)」さんといった場合には読み方が違っても登記簿上同姓同名となってしまうケースが想定されます。
 意図的に同じ名前を名付けた場合に発生する①のケースに比べると確率は低くなるでしょうが、「同じ名前な事が縁で結ばれた」というようなご夫婦の方々もいらっしゃるでしょうし、この場合もある程度現実的な「同姓同名」且つ「同住所」の類型となります。
 
さて、このような場合はどうすればよいでしょうか?
両パターン共に家族のため、①の場合は「被相続人 田中太郎(祖父)から相続人 田中太郎(孫)への相続による所有権移転」だとか、②の場合は「斎藤千尋(夫)と斎藤千尋(妻)が不動産を共有者として1/2ずつ取得」なんて大変に紛らわしい事態が発生しかねません。

実は、これに関しては先例があります。

相続による共有持分移転登記の結果、同一の不動産につき、住所を同じくする同名異人の共有者が併存することとなるような場合は、当該申請書に住所、氏名のほか、共有生年月日をも記載して、その共有者の登記を受けることができる。なお、すでに登記されている住所を同じくする同名異人の登記名義につき、生年月日を付記する旨の更生の登記の申請をすることができる。

昭和45年4月11日民事甲第1426号民事局長回答

「氏名」も「住所」も同一の二人が同じ不動産の登記簿上に存在する場合、「生年月日」も記載する事ができます。
「祖父母と同じ年の同じ日に生まれた孫」なんてありえるはずもありません。
ひとまずはこの措置で特定が可能となるのです。

4.それでも区別がつかない時は……?


実務的に考えれば「氏名」「住所」「生年月日」の3つがあればまず個人を特定が可能ですが、もし同名の男女が結婚し、たまたま生年月日まで一致した場合はどうでしょうか。
ものすごく低い確率ではありますが……夫婦であれば同世代で有ることも多いため、ここまで被る事も絶対にありえないとは言い切れないでしょう。(令和元年5月1日に生まれたので「令」のように、生年月日にちなんだ名前をつけるという事もあります。)
もしもこのように「氏名」「住所」「生年月日」が完全に一致してしまえば、当然それしか情報のない登記簿上ではどう見ても同一人物となってしまいます。
流石にここまで稀なケースは前例が無いため「このように登記される」というような事はハッキリと言えないのですが、区別をつけるとしたら以下のような方法が考えられるでしょうか。

①結婚によって姓が代わった方の氏名に旧姓を併記する。
②続柄(夫・妻)か性別(男・女)を記載する。

個人的にとても気になる所ではありますが、実際にそのような登記申請が必要となる事態が発生しない限り、残念ながら法務局に問い合わせても回答をもらう事はできません。

もし、この記事をお読みいただいた読者の方の中に「同じ名前で同じ生年月日の夫婦だが不動産を購入したい」という方がいらっしゃいましたら是非お気軽にピークスへご相談ください。
ピークスではこのような先例のない案件のご相談も積極的に受付させていただいております!

本日もお読みいただきありがとうございました。

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